相続人の中に行方の分からない人がいる場合、残りの相続人のみで遺産分割協議を行うことは出来ません。
 そのような場合に、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらうことで、行方不明者の財産の管理する人を決めて遺産分割協議を行えるようにするのが、不在者財産管理人制度です。

「不在者」の定義

 「不在者」とは、従来の住所や居所を去って容易に帰ってくる見込みのない者を言い、①住所や居所が分かる場合や②簡単に連絡が取れる場合は不在者とは言いません。

不在者財産管理人の申立て

 不在者財産管理人は、誰でも申立てが出来るわけではなく、①利害関係人②検察官からのみ申立てが可能です。
 ①の利害関係人とは、相続人の中に不在者がいる場合の共同相続人や共有不動産の一部の者が行方不明の場合の他の共有者等を言います。
 よって、不動産業者様等で、購入希望の不動産の所有者と連絡が取れないといった場合でも、本制度を使うことは出来ません。

予納金について

 家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てると、不在者財産管理人が選任されます。
 我々司法書士や、弁護士といった専門職が選任されることが多いですが、申立時に候補者の記載をすることも可能です。
 通常、専門職が不在者財産管理人に選任されると、家庭裁判所に30万円から100万円程度の予納金を納める必要があります。
 これは、不在者の金銭的財産が少なく、不在者財産管理人の報酬及び管理費用が足りないと思われる場合に、事前に申立人が家庭裁判所に納付していただくお金になります。
 親族の方が不在者財産管理人となり、事前に不在者財産管理人としての報酬を放棄することも可能であり、その場合は、予納金の金額も低額になる可能性はあります。

不在者財産管理人の業務

 遺産分割協議が目的の場合、家庭裁判所に事前に遺産分割協議案を提出します。
 原則として家庭裁判所は、不在者の取得分が法定相続分を下回るような遺産分割協議案には許可をしてくれません。
 家庭裁判所の許可がおりると、不在者財産管理人と他の相続人で遺産分割協議書に署名捺印し、相続登記等を行います。
 不在者財産管理人の業務は、遺産分割協議が完了して終了ではなく、以下の事由が発生するまでは、業務が続きます。
 ①不在者が現れる。
 ②不在者の死亡が確認される。
 ③不在者について失踪宣告がされる。
 ④不在者の財産が無くなる。
 不在者財産管理人の業務を続けると、報酬が発生するため、いずれは④の事由により管理業務は終了します。
 また、遺産分割協議の際に、「帰来時弁済型」の遺産分割を行うことにより、④の事由により管理業務を終了させることも可能です。
 「帰来時弁済型」の遺産分割とは、不在者以外の相続人が法定相続分以上の財産を取得し、不在者が見つかった時は、取得していた財産を支払うという遺産分割のことです。
 ※通常、遺産の額が少額の場合に認められるものなので、遺産の額が高額である場合には、家庭裁判所が帰来時弁済型の遺産分割協議は許可されない可能性が高いです。

費用(税込み)

▢不在者財産管理人の申立て
・報酬 16万5,000円~
※遺産分割協議案の作成も含みます。
・申立費用 印紙代800円+郵便切手(数千円)
・戸籍等取得 1請求につき、実費+1,500円

□弊所を不在者財産管理人とした場合
・報酬 上記の申立費用を除く報酬は、家庭裁判所からの報酬決定に準じます。